ようこそ片隅へ・・・ ここは、文学の周縁と周辺を徘徊する場所。読書の記録と、文芸同人誌の編集雑記など。

2011年4月24日

届いたよ

残雪研究」第三号をお願いしていたのだが、昨日届いた。




拾い読みしているが、さて、残雪がこんなにわかっていいかしら? と・・・。

「芸術家たちと、ロマンチシズムを読んだ町長のじいさん」は、地方文化人の低劣さをあげつらい、「奇妙な大脳損傷」は、精神病の不可知性を叫び、「永遠の不安」は、老醜の哀れを謳う。「両足が魚網のような女」は、飛ばしてしまった。

ただ、もちろん上に書いた要約におさまる残雪の小説であるわけもないのだけれど、語り手の立ち位置が、やけに現場から遠く感じられる。
初期の残雪は、それらの当事者だったのに、傍観者におさまってしまっている点が、面白さに欠ける原因だと思う。奇妙で不気味な人が奇妙で不気味な世界に生きていたかつてを思うと、奇妙で不気味なのは世界ではなく、そこにいる人々だけになり、だけどそれと交流する語り手は、やはり落ち着いたひとのままなのだ。
「芸術家たちと、ロマンチシズムを読んだ町長のじいさん」がまさに地方の人々であり、「永遠の不安」もまた、都会に出た一青年が帰郷して、恩師を見舞う、すなわち地方の出来事だ。「永遠の不安」が明らかにするのは、語り手と一体の景蘭が、都会から一時的に帰郷したものであるとおり、都会と相対化された地方都市が舞台になっているという点だ。

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